気候変動への対応

当社は「経営を通じて人々に感動を与え続け、地域・社会に必要とされる存在となること」をミッションとして掲げており、事業活動を通じて社会的及び環境的なニーズに向き合って社会課題の解決に取り組むことで、持続可能な社会の実現に努めております。
また、2030年に向けた長期経営方針として「壱番屋長期ビジョン2030」を策定しており、これを実現するための10の重点項目のうちの1つとして「環境にやさしい取り組み」を掲げ、気候変動への対応を進めております。

TCFD提言に基づく情報の開示

(1)ガバナンス

前述のとおり、当社では気候変動を含むサステナビリティ課題に対応するための適切なガバナンス体制を構築しております。取締役会では、サステナビリティ委員会(委員長:総務部担当取締役、委員:その他の社内取締役)にて検討・審議された取り組み方針や計画・目標、各施策の進捗などの管理監督を実施し、必要に応じて指示を出しております。サステナビリティ委員会は、サステナビリティ課題についての具体的な目標や方針、施策などを検討・審議しており、重要事項については取締役会へ付議・報告するプロセスを構築しております。また、環境対策委員会を通じて、各事業部門と連携の上、個別具体的な取り組みを推進しております。気候変動対応の推進体制は下表の通りです。

体制図

体制図


各会議体一覧

会議体 頻度 議長・委員長 委員 機能・役割
取締役会 毎月 代表取締役社長 取締役 サステナビリティ課題の審議・監督
サステナビリティ委員会 年4回 総務部担当取締役 社内取締役 サステナビリティ課題の審議・監督
環境対策委員会 年6回 総務部長 各事業部門担当 個別具体的な環境対策の推進や各事業部門への意識啓発

(2)リスク管理

当社は、サステナビリティ委員会の指示に基づき、気候変動に関するリスクの特定・評価を実施しております。「リスクと機会」では、発生の可能性や財務的影響度、当社を取り巻く環境の側面から重要度の高いものを抽出し、評価を実施しております。
抽出された気候変動関連リスクは、サステナビリティ委員会での検討・審議を経た後、必要に応じて取締役会に報告され、適切な管理・監督が行われております。検討した各リスクへの対応策は、取締役会・サステナビリティ委員会の指示のもと、各事業部門へ連携し具体策の実行を検討してまいります。気候変動に関するリスクの特定・評価のプロセスは下表の通りです。

フロー

(3)戦略

当社の財務に影響を及ぼす可能性のある重要な気候関連リスクおよび機会を特定するため、当社単体を対象にTCFD提言で推奨されているシナリオ分析を行って気候関連リスクと機会を特定し、それに対する対応策を検討いたしました。

■想定される重要なリスク機会項目抜粋

1.5℃シナリオ

リスク・機会 細区分 要因・ドライバー
移行リスク 政策・法規制 炭素税導入
既存製品やサービスに対する義務化・規制化
技術 低炭素技術への移行のための先行コスト
市場 原材料コストの高騰(電力)
移行機会 資源効率 効率的な生産および流通プロセスの使用
エネルギー源 より低排出のエネルギー源の使用
製品及びサービス 消費者の嗜好の変化

4℃シナリオ

リスク・機会 細区分 要因・ドライバー
物理リスク 急性リスク 台風、洪水などの異常気象の激甚化
慢性リスク 平均気温など、気候パターンの極端な変動性
物理機会 製品及びサービス 消費者の嗜好の変化

■TCFD提言に基づくシナリオ分析結果

当社は、IEAやIPCCのレポートに基づき、2つのシナリオ(1.5℃シナリオ、4℃シナリオ)を設定いたしました。100以上のリスクと機会を網羅的に抽出し、事業に与える影響が大きいと評価した項目は以下の通りです。
今後、具体的なリスク管理策や機会の活用を明確にして取り組んでまいります。

シナリオ分析の前提条件

対象企業 時間軸 財務影響(営業利益への影響/単年度・単体)
当社単体 短期:~単年度
中期:~2030年度
長期:~2050年度
大:5億円以上
中:0.5億円以上5億円未満
小:0.5億円未満
No リスク・機会 区分 影響概要 影響時期 影響度
1.5℃
シナリオ
4℃
シナリオ
1 移行リスク 政策・法規制 炭素税負担による自社租税コストの増加 中期~長期
2 炭素税の導入による原材料調達コスト、物流コストの上昇 中期~長期
3 プラスチック規制の強化による代替品への切替に伴うコスト増加 中期
4 技術 店舗、工場への低炭素設備導入におけるコスト増加 短期~中期
5 市場 再生可能エネルギーへの切替に伴う電力価格の上昇による自社エネルギーコストの増加 短期~中期
6 物理リスク 急性リスク 店舗・工場などの被災による復旧・修繕コストの増加(直接損害) 短期~長期
7 店舗・工場などの被災による事業停止に伴う売上減による利益減少(関節損害) 短期~長期
8 慢性リスク 農・畜・水産物の生産量低下・不安定化に伴う原材料調達コストの増加 中期~長期
9 生産量低下・不安定化に伴うコメの調達コストの増加 中期~長期
10 外出機会減少及び外食ニーズの低下に伴う売上高の減少 中期~長期
11 店舗・工場などの空調などにかかる電力使用量上昇によるエネルギーコスト増加 短期~中期
12 機会 資源効率 物流の効率化に伴う輸送コストの減少 長期
13 エネルギー源 再生可能エネルギーの技術向上・普及によるエネルギーコストの減少 長期
14 製品・サービス 植物性たんぱく質などエシカル消費に対応した環境配慮食材利用メニュー開発に伴う売上増加 長期
15 平均気温上昇による嗜好の変化に適合した商品開発・提供による売上増加 中期~長期

(4)指標と目標

シナリオ分析の結果、CO2排出量の削減が当グループのリスク軽減と機会拡大につながることを再確認いたしました。引き続き長期ビジョン2030に基づき、当社のCO2削減目標に取り組んでまいります。

■Scope1、2

自社から排出されるCO2について、2030年度に70%削減(2013年度対比)する目標を設定しております。また、2050年に向けてカーボンニュートラル達成を目標としております。

■Scope3

排出量の大部分を占めるカテゴリ1およびカテゴリ14の削減に取り組んでまいります。カテゴリ1については、サプライヤーとの連携を強化し、排出量の少ない原材料の調達を今後検討いたします。カテゴリ14では、本部として排出量を抑制するためのフランチャイズ(以下、FCという)店舗運営に向けた施策を検討してまいります。

■CO2排出量実績

Scope1、2削減の主な取り組み:

  • 環境投資の実施(太陽光発電システムの導入)
  • CO2フリー電力の活用
  • ハウス食品グループ本社株式会社の他拠点一括エネルギーネットワークサービスの活用

Scope3削減の主な取り組み:

  • 排出量を抑制できるFC店舗運営に向けた施策を検討(Scope3カテゴリ14の削減)


項目 2013年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
Scope1、2排出量
(t-CO2)
22,559 16,091 14,146 12,756 7,335 7,572
(2013年度比) ▲29% ▲38% ▲44% ▲67% ▲66%
Scope3排出量
(t-CO2)
253,594 154,024 154,531

(注)1.集計対象は当社単体です。
   2.2024年度については現在算出中です。

■CO2削減目標

指標 2030年度目標 2050年度目標
Scope1、2
(2013年度比)
▲70% カーボンニュートラル
Scope3 カテゴリ1及び14の削減


重要度の大きいリスク機会項目への検討を優先的に行い、以下の対策を進めます。

No バリュー
チェーン
リスク機会 具体的内容 想定される対応策
2 上流 リスク 炭素税導入 炭素税の導入による原材料調達コスト、物流コストの上昇 Scope3上流工程の排出量の中で、ウェイトの大きい原材料の主要サプライヤーとのエンゲージメント(対話)実施
12 上流 リスク 降雨パターンの変化、気象パターンの極端な変動性 農・畜・水産物の生産量低下・不安定化に伴う原材料調達コストの増加 原材料調達先の複線化検討や代替原材料の探索を行い、安定的な調達環境の維持・強化
13 上流 リスク 熱波、干ばつなどによるコメの不安定化に伴うコストの増加
1 自社 リスク 炭素税導入 炭素税負担による自社租税コストの増加 ・環境配慮型店舗の導入、店舗におけるLED照明の導入継続によるGHG削減
・CO2フリー電気などの再生可能エネルギー導入拡大の検討継続
・環境対策委員会を通じて集約した各部署からの削減活動案の着実な実行
3 自社 リスク 既存製品やサービスに対する義務化・規制化 プラスチック規制の強化による代替品への切替に伴うコスト増加 既に実施しているスプーン・レジ袋の環境配慮品への切替に加えて、他の包装材も義務化前の段階で切替を検討し、コスト増加を平準化させる

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