壱番屋が福祉活動をはじめたのは、カレーハウスCoCo壱番屋を開業して3年目を迎えた1980年のこと。まだ手元の運転資金がとぼしく、自転車操業でやりくりをしていた頃のことでした。
年越しの運転資金として借り入れた100万円のうち、手元に残った一部を地域の団体に寄付したことがきっかけでした。創業者である宗次夫妻は「経営は苦しいが、世の中にはもっと困っている人たちがいる。こうして元気に仕事ができるだけでも幸せ」と感謝の気持ちを込めて、わずかな金額でも社会福祉に役立ててもらおうと考えたのです。
福祉活動はその後も継続し、2005年には「前期利益の1%程度を寄付に充てる」と取り決めて、カレー提供や福祉団体への寄付などの活動を毎年行っています。その中心にあるのは、子どもたちへの支援です。未来ある子どもたちの中には、さまざまな事情で家族と離れて生活をしている子や、経済的な問題から十分な学ぶ機会に恵まれていない子がたくさんいます。子どもたちの未来を応援したい、そんな思いで寄付を続けてきました。
現在、総務部で寄付・協賛活動を担当している菱田さんは、この数年で活動に少し変化があったと話します。
「以前は福祉団体を通じて寄付していましたが、直接お困りごとを伺って必要なものをお届けできないかと考え、2021年に壱番屋本社のある愛知県一宮市からスタートしました。」
県や市を通じて、児童養護施設などへ必要な生活必需品をヒアリング。十分な予算がなく、老朽化していても更新ができていなかったエアコンや冷蔵庫、洗濯機などをお届けしました。2022年に岐阜県、2023年には三重県の施設へ寄付を行いました。
「合言葉にしているのは『顔の見える社会貢献活動』です。カレー提供やボランティア活動では『自ら汗をかく、足を運ぶ』ということを大事にしてきましたので、寄付活動にもそれを広げた形です。お金や物だけでなく、温かい気持ちも一緒にお届けしたいと思っています。」
直接、施設の方とお会いし、お話しすることで新たな寄付の形につながることもあります。
「児童養護施設で暮らすお子さまの中には、小学校入学を控えた子もいらっしゃいます。しかし、新しいランドセルを購入する費用がなく、お下がりを使うことも多いということを知ったんです。」
昨年から、新一年生がいる施設にはランドセルも寄付をさせていただくことに。カタログから好きな色やデザインを選んでいただいています。
「お気に入りのランドセルで、元気に小学校に通っていただきたいですよね。やっぱりお子さまが笑顔になってくれることが1番です。」
菱田さんは、ランドセルが予定通りに届くか、希望通りのものが届くか心配でたまらないそうです。
「お届けにあがるまでは心配でたまらないですが、直接お喜びの声を伺うと、こちらもとてもうれしい気持ちになります。お礼のお手紙をいただくこともあり、読んでいると思わず目頭が熱くなってしまいます。こういった活動ができるのは、橋渡しをしてくださる県や市の職員の皆さまのおかげですので、とても感謝しています。」
2024年は営業所がある福岡県、工場がある佐賀県内の施設への寄付を予定しています。最後に今後の取り組みについて菱田さんに聞きました。
「基本の考えや思いを大事にしながら、どんな支援の形がいいのかということは、ずっと考え続けていきたいと思っています。今は昔よりも『助けて』と言いやすい世の中になってきたと思います。頼られたときに手を差し伸べられる企業であり続けたいです。」
壱番屋はこれからも寄付活動を通じて、社会への恩返しを続けていきます。
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